証拠写真

2001年8月24日
ミズーリ州 ブランソンから アーカンソー州ユリイカ・スプリングスまで

ブランソンで朝一番の給油。

アメリカ式のセルフサービスのガソリンスタンドを使ったことがないとわかりにくいが、
これは都市部の常識からすると、信じられない表示である。
「夕方6時から朝の8時までは、給油する前にお金を払ってください」
つまり、昼間の時間帯は、車を乗り付けてセルフサービスで給油し、そのあとスタンドの中へ入って支払いをする。
ブランソンのように観光客が多い地域で、こんな誰でも簡単に逃げられるようなシステムの
商売が成立するなんて奇跡のようだが、これが奇跡でないのがブランソンという町の奇跡である。


感心しつつ、町を出る直前、道路際の看板が目にとまる。

「TVガーディアン、悪い言葉をフィルターします」
テレビの垂れ流す害毒から、あなたの家庭を守りましょう、ということか。
派手派手イケイケなブランソンであるが、実は、ここにはアダルトな店がひとつもないのである。
大人が悪いことをする場所が、どこにもない。レストランに併設されたもの以外、バーすら、ひとつもない。町が禁止しているのだそうだ。

我々が観たショーは、どちらも、舞台後半盛り上がったところで、神を称えるゴスペルソングが挿入されていた。
この絶妙なバランス感覚が、ブランソンの繁栄を支えているのかもしれない。
稀有な町である。


本日の目的地は、ブランソンのすぐそば、アーカンソー州、ユリイカ・スプリングス。
州境を超えたあたりで「アーカンソーなんて一生来ると思わなかったなあ」と話し合う。
クリントン前大統領の出身地だという以外、アーカンソーの話題って、あります?


ユリイカ・スプリングスは、その昔、インディアンたちに、薬効のある神聖な泉として守られていた。
白人たちがやってきて、谷間に町ができ、療養に来る人たちで栄え、19世紀末にはすでにガス燈がつき、鉄道が来ていたという歴史を持つ。
町全体が史跡として保存されているので、新しい建物を建てるときにも外見は昔の様式を守らねばならず、
古い家を改装するときは、ペンキを塗るだけでも町の許可が必要だということだ。


写真左は、かわいらしい木造のコテージ。我々が泊まった宿の隣にあり、同じ経営者夫妻の所有で、やはり宿として使われている。
買ったときには内部はボロボロで、数年かけて改装したそうだ。
右は、町の中心部に立つ煉瓦造り3階建て。ギャラリーや民芸品店が入っている。


町の外見にふさわしく、カップルの観光客が多い。ブランソンがお年寄りと家族連ればかりだったのとはずいぶん違う。
宿のノートには、結婚記念日をこの町で過ごした夫婦の感想がたくさん寄せられていた。
日本だと、ロマンチックな町は女性の2人連れで行くと決まっているが、アメリカだとカップルで来る場所のようだ。
アメリカ人の男性は、日本の男性たちよりもサービス精神が旺盛なのだろうか。それともまさか、こういうのが本当に好きとか・・・。
写真は、町の写真館。時代劇風の貸衣装で楽しい写真をとってもらうこともできるが、結婚式もあげられる。
結婚写真ではなく、司祭つきの、本物の結婚式である。無論、書類作成つき。

しかし、ここをロマンチックな古い町と思い込んだ我々の第一印象は、明日、より複雑な現実に裏切られることになる。


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